トピックス
- 2010_「J1&2」_今日も連チャン観戦・・ここでは監督のハナシだけをピックアップ・・(BvsC, 0-4)(横浜FCvsザスパ草津, 0-1)・・(2010年11月28日、日曜日)
- ホントに興味深かった。いや・・ゲーム「だけ」じゃなくて、ゲーム後会見での監督さんのハナシ(そこで話題になった様々なテーマ・・)。
まず、ベルマーレ対セレッソ。
(様々な意味合いの限界があることで・・)しっかりと計画されたゲーム戦術で試合に臨んだベルマーレが、攻め込まれながらも、忍耐強く冷静なゲーム運びで「実質的なイニシアチブ」を握っているかのような雰囲気を放散していた。そんな、後半の立ち上がり7分のことでした。
「ドカンッ!!」 セレッソの丸橋祐介が左足を振り抜いた。たぶん、蹴られた無回転ボールは「ブレ球」だったはず。ベルマーレGK野沢洋輔は、その不自然なボールの動きに対応できず、結局はサイドネットを揺さぶられてしまう。そして、その9分後には、アマラウが蹴ったフリーキックが、ベルマーレ選手に当たってコースが変わり、ベルマーレGK野沢洋輔の逆モーションを取るように、コロコロとゴールへと吸い込まれていった。これで、セレッソの「2-0」。まあ、この追加ゴールが決まった時点で勝負ありだったね。
ということで、記者会見。まず、「J2から昇格した3チームのなかでは、セレッソが唯一成功しているクラブということになるが・・」という問いに対し、レヴィー・クルピ監督が、こんなニュアンスのことを言っていた。
「セレッソが為した成果の大きな部分は、しっかりとした補強に支えられていた・・また、フロント、現場とマネージメントスタッフのチカラ、選手の努力、そしてサポーターの後押しが一つになったことも大きかった・・それだけではなく、改修され新装なったキンチョウ・スタジアム(旧・長居球技場)という素晴らしいサッカー場でゲームが出来るようになったことも、とても大きい・・」
レヴィー・クルピ監督がつづけます。「ブラジルでは圧力釜と表現するのだが、要は、ファンの歓声や興奮が(スピリチュアルエネルギーが!)スタジアム全体を包み込むだけじゃなく、それが圧縮され、何倍にも密度が高まるようなエキサイティングな雰囲気のことだ・・だから、ファンとグラウンドの一体感はレベルを超えたモノになる・・我々が、キンチョウ・スタジアム(金鳥スタ)で特別に強さを発揮できていることが、その証明だ・・最終戦は、そこでジュビロとやるわけだが、今シーズンの仕上げとして、最高の結果を残したい・・いや、残せるに違いない・・」
圧力釜ね〜〜。さすがに、フットボールネーションには、さまざまな表現がある。わたしは、この試合の後、横浜のニッパツ三ツ沢球技場で、J2の「横浜FCvsザスパ草津」戦を観たのだけれど、そこもまた、まさに「圧力釜」だった。心地よいことこの上ない。
もちろんドイツにも、アーヘンとかマインツ、シャルケとかドルトムントなど、多くの「圧力釜」がある。もちろんイングランドにもフランスにも、スペインやイタリアにも・・。世界中の至るところにある圧力釜。そりゃ、数え出したらキリがなくなってしまう。
ハナシを進めましょう。前述のクルピさんの言葉を受けて、今度はわたしが質問した。
「補強がうまくいったということだが、そのなかで、クルピさんにとって最も重要だったのは、アマラウとマルチネスのダブルボランチだったと思うが?・・また、ポルトガル語でボランチとは、ハンドルという意味だが、守備的ハーフ(センターハーフ)であるボランチという表現の、ブラジルで使われている意味合いについて教えていただけないだろうか?」
「ブラジルでのボランチという表現がもつ意味合いは、おっしゃるように、クルマのハンドルのように、攻撃や守備において、プレーの方向付けをする役どころということになる・・まあ、チームのコントローラー・・ウチのチームでは、アマラウとマルチネスのダブルボランチは、とても重要な役割を担っている・・彼らが、攻撃と守備の両面で、様々な意味でチームをリードしていることで、チームのバランスは、すこぶる良い・・この2人は、本当に素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれている・・その証拠に、我々の失点数は、鹿島と並んで最小だし、得点数にしてもトップクラスだ・・」
結局、アマラウとマルチネスのダブルボランチが、クルピさんにとって最も大事な補強だったかどうかの言質はもらえなかったけれど、まあ彼のコメントから推して知るべしだね。とにかく私は、今シーズン、セレッソが魅せた大躍進の隠れた主役が、アマラウとマルチネスのダブルボランチだったと思っているわけです。
ということで、『ブラジル』に敬意を表するという意味合いも含め、わたしが、安易に「ボランチ」という表現を使わないこと(ほとんどが守備的ハーフという表現・・)の根拠の一端に触れてみた次第です。
さて次が、反町康治監督。「見ての通りです・・まあ、この試合については、コメントする必要はないかもしれませんネ・・」と、ちょっとネガティブな心境を垣間見せていました。そんなところに追い打ちをかけるように、「いまのベルマーレは、負け癖がついていないか(負けることに慣れてしまっている)?」といった厳しい質問が飛んだ。
「そうですね・・選手は、ゴールを決められたら、すぐに下を向いてしまう・・もちろん人間だから、落ち込むこともあるし、こちらは、失点したら取り返せばいいということはいつも言っている・・しかし選手は、やられたらどうしようという受け身でネガティブな姿勢になってしまっている・・」
これまたネガティブなやり取り。そして、「同時に昇格したセレッソからは大きく引き離されてしまったが・・?」という質問には、「アチラはバージョンアップし、ウチは出来なかった・・それが具体的な差になって表れたと言うことでしょう・・」と、あくまでもクールにコメントしていた。
だから、聞いた。「監督は、それぞれのチームの事情に応じ、サッカーの内容と、結果を追求することを、うまくバランスさせなければならないと思う・・例えば、(特にシーズン中盤以降の)ベルマーレが置かれていた状況だったら、徹底ディフェンスで守り倒す・・なんていうサッカーも具体性を帯びていたように思うのだが・・もちろんベルマーレは、そこまで徹底的に守り倒すというサッカーは、やらなかったワケだが・・」
「J1じゃ、徹底して守り倒すというサッカーは出来ないと思いますよ・・とにかく我々は、出来ることはすべてやり尽くしたという自負はあります・・結果については残念だったが、持てるチカラを出し切ることは出来たと思っているのです・・それでも我々の現状では、越えられないハードルがあることも確かな事実です・・そのハードルを(来シーズンに向けて!?)どのように越えていくのか・・また越えられる方策をどのように練っていくのか・・そのテーマは、これからのクラブとの話し合いのなかでベストアンサーを探っていくことになるでしょうね・・」
まあ、質疑応答の中では、反町さん特有の言い回しで会場に笑みがこぼれる場面もあったけれど、結局は、重苦しい雰囲気が大きく好転することはなかったようでした。とはいっても、例によって、反町さんは、特有の元気オーラを放散していたけれどネ。それは、それで、彼の優れたパーソナリティーの為せるワザではありました。
来シーズンの(J2の)ベルマーレ。これからも、出来る限りフォローするつもりです。
最後に、J2の「横浜FCvsザスパ草津」戦。こちらも、とてもエキサイティングな勝負マッチになった。日本サッカーの全体的な底上げによって、J2はもちろんのこと、JFLにしても、カネを取って見せられるプロサッカーのレベルにまで「価値」が高揚している。下部リーグを見るたびに、そのことを体感している筆者なのです。
この「横浜FCvsザスパ草津」戦も例外ではなかった。もちろん局面の勝負シーンには、バルセロナやレアル、マンUが魅せる、超越したスーパープレーはありません。それでも、互いに、しっかりとボールをコントロールしながらの(高いレベルの)競り合いだから、見応え十分なのです。もちろん、攻撃にしても守備にしても、互いの「意志と意図」が、しっかりとトレースされている(観ている方も、意図をトレースできる=レベルの低いミスが、大きく減少している!!)ことで、見応えある攻防になっている。
実際のゲーム展開だけれど、前半は横浜FCが、イニシアチブを握り、何本か、決定的チャンスも作り出した。でも後半は、逆にザスパ草津が、素晴らしいサッカーで横浜FCを凌駕し、決勝ゴールまで奪った。
この落差について、その背景要因を、横浜FCの岸野監督に聞くつもりだったけれど、試合後のセレモニーが長引いたことで、彼が会見に登場する前に(所用があったのですよ)東京へ戻らなければならなかった。ちょっと残念ではありました。
その代わり、とても素晴らしいサッカーを展開したザスパ草津の副島博志監督に、そのエッセンスを質問することが出来た。
「いま副島さんは、自分たちのサッカー・・とか、攻守の戦術がフィットしてきた・・とか、ザスパには積み重ねてきたモノがある・・という表現をされた・・いまのザスパ草津が展開している優れたサッカーの絶対的なバックボーンを表現すると、どのようなモノになるだろうか・・キーワードを提示していただければ幸いなのだが・・?」
「キーワードは、スイッチ・・ですかね・・要は、攻撃や守備の目的を達成するために、タイミングよくスイッチを入れるということです・・そして、そのスイッチが、多くの味方に同時に入ることで、互いの組織プレー(イメージ)が効果的に連動するというわけです・・攻守にわたる勝負の流れをスタートさせるスイッチとでもいいますかネ・・そして、同時に入ったスイッチによって、互いのプレーが効果的に連動するという成功体感が得られる・・もちろん、絶対的なベースは守備ですが、その連動スイッチは、攻撃での組織コンビネーションでも大事になってきます・・まあ、「連動性」の成功体感を積み重ねることで、徐々にサッカーが進化していったということですかね・・」
ザスパ草津の副島博志監督。彼は、プロコーチとして、プロ選手やメディアにアプローチする「言葉」を持っている。まあ、大したものだ。ザスパ草津の「GM」は、植木繁晴さん。わたしにとって、数少ない日本人の名将プロコーチです。
優れたGMと、優秀なプロコーチのコラボレーション。チームが強くなるはずだ。ザスパ草津については、ベルマーレ同様、来シーズンも注目しましょう。
これは「J」のコラムだけれど、内容が内容だから、「トピックス・コラム倉庫」に収納しておくことにします。それでは、今週末の「J最終節」を、お互い、とことん楽しみ尽くしましょう。
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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